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ヒルズボロの悲劇への評決へ寄せて


ヒルズボロの悲劇。
フットボール史上最悪の事故と呼ばれる大惨事は、1989年4月15日に起こりました。

ヒルズボロ・スタジアムでのFAカップ準決勝、リバプール対ノッティンガム・フォレスト戦においてゴール裏の立ち見席が収容能力を超えてしまい崩壊。

死者96人、重軽傷者約800人が出てしまうという悲しむべき大事故に。

このヒルズボロの悲劇には、いろいろな事情が絡み合い、責任、原因の所在がどこにあるのか?が、問われ続けてきました。

英国は一時期、国策としてフーリガン対策を打ち出し、ヒルズボロの悲劇に対しても、一部フーリガン的な行動であるという主張をする人々もありました。
要するに、悪いのは押し寄せた観客であるという意見。

一方、警察、警備、医療等々、いわゆる管理する側に問題があったのではないかという指摘もあり、その結論が出ないまま27年間の歳月を経てしまいました。

ご遺族にとっては、長い、長い時間だったことと思います。

ヒルズボロの悲劇から20年が経ったとき、「ヒルズボロ独立調査委員会」が立ち上がり、全記録の公開へ向けて大きな前進を遂げることになります。

明らかにされた記録等から、観客の誘導に不備があったこと、医療体制に問題があったことなどが明らかにされました。
また、何より大きかったのは、警察関係者による捜査資料改ざんがあったことが露呈したことかと思います。

いわば、責任を転嫁された形になった遺族にとっては、心やすまることもなかったことでしょう。

そんな中、リバプールは毎年のように追悼式を行い、遺族へ心を配り続けてきました。
こういった取組が、世論を動かしたのも事実だと思います。

時代と共に、法の運用に変化が生じていたことも、事実としてあると思います。
たとえば、日本であれば「国家賠償法」という法律があり、国が管理する施設において、その管理体制に重大かつ明白な過失があった場合には、国家が賠償を負うと規定されています。
この法律は、地方自治体にも準用、適用されています。

昨今は、以前にも増して、この「管理責任」を広く捉える実例が増えてきています。
英国についても、方向性としては同一だと考えます。

今回の陪審員における評決では、まずファンには責任はないと断定しています。
いわゆる警察側の悪質な職務不履行等々、重大な過失があったと断じたものです。

亡くなった96人が帰って来ることはありませんが、ご遺族にとって、ようやく訪れた安息の日かと思います。

今回の評決で、ヒルズボロの悲劇は大きな節目を迎えました。
しかし、これからは心新たに、犠牲になった方々に哀悼の意を尽くし、二度とこういった事故が起こらないように、フットボール界が手をたずさえてゆくときかと思います。

ご遺族の方々も、晴れて報告することが出来たことでしょう。

来年の追悼式は、また格別な日になりそうです。

ここに改めて、お亡くなりになった96人の方々に、心から哀悼の意を表したいと思います。

リバプールファンのプライドとして、96人の名前は永遠に語り継がれることでしょう。

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